頚椎症性神経根症状と手根管症候群の見極め
都内在住 50代 女性
右指の痺れで来院
1か月前に整形外科にて頚椎症からと診断され、その後、整体院と整骨院に何か所か通うが良くならない。
ここ2週間、悪化しているとの事で当院の頚椎症の紹介ページをご覧になり来院。
【主訴】
・右示指(人差し指)の痺れ
・右母指(親指)の痺れ
【副訴】
・右腕~右肩も少し鍼とだるさ
【経過】
・1か月前~ 症状が出始める
・2週間前~ 徐々に悪化
じわじわ悪化している。
今回のパターンでは頚椎症からの神経症状と診断された患者様でした。
問診時に
・頚椎の可動域時に、頚椎症で神経症状が出やすい動きが顕著な異常が無い事
・増悪因子が、夜寝る前のスマホ
という情報を最初に確認。
「頚椎症からの手の痺れ」に???を思い浮かべながら、問診は行います。
ちなみに「親指」「人差し指」の痺れが出る疾患として
・頚椎症性神経根症状
・胸郭出口症候群
・円回内筋症候群
・手根管症候群
などが主に考えられます。
あらゆる疾患を想定しながら問診と検査を
上記のように、母指と示指に痺れが出る疾患は体の構造、解剖学的にはいくつもあります。
それぞれ疾患の特徴やメカニズムを理解していれば、症状の分析は可能なので、上記を想定しながら、問診と検査を同時並行で進めていきました。
その後、お聞きしたこと
痺れの原因が私自身の中でしっくりくるまで問診は基本的には続けます。
首の可動域、肩関節の可動域、夜寝ている姿勢、重い物をもつか、等様々な事を伺い、
・母指球(親指の付け根)付近の違和感(感覚異常)
・手をつくと悪化
・勉強中の悪化
・母親の介護で体を右手で支える事が増えた
というお話を聞き、腕周りの徒手検査を行う。
下記にざっくりまとめると、
【所見】
・整形にてレントゲン → 頚椎症の神経症状と診断
・増悪因子・・・夜寝る前のスマホ、勉強中、手をつく、手を使った後
・緩解因子・・・仰向けで寝る、集中してるとき
【検査】
《首》
可動域 ・・・あらゆる動きで首肩の症状(張り感)あり。
神経学的検査・・・陽性反応なし(-)
《手首》
徒手検査と神経学的検査
ふたつの検査で陽性反応あり(+)
いくつか検査をし、手首周りの手根管の部位へのわずかな負荷をかけると症状の増悪、その後の神経学的検査の陽性がみられた為、
手根管症候群による神経症状の可能性が高い、と判断しました。
手根管症候群とは?
長くなってしまうので、ざっくり簡単に。
手首周りは、手根骨という細かい小さな骨で構成されています。ピンク色の部分ですね。
その中央部分に「正中神経」という首から繋がっている神経が手首を通り指先までいきわたっています。
その手首の部分でなんらかの影響により神経が絞扼されてしまい、正中神経領域の手先に痛み痺れ、感覚異常などが出る疾患です。
手根管症候群へのアプローチ
・手根部を通る筋肉の過緊張や短縮、弱化筋
・手根骨の配列異常
・近位橈尺関節(肘周り)と遠位橈尺関節(手首)のバランス
・脊柱から骨盤のバランス
・むくみによる正中神経の圧迫
などを確認しながら治療をすすめていきました。
経過
患者様ご本人は、手首が原因、と言われたのは初めて、との事。
初回は上記を考慮し鍼灸施術。
2回目は5日後に来院。
症状は変わらず。少し状態を確認するも、検査結果はやはり同じな為、引き続き手根管症候群へのアプローチ。
3回目は1週間後に来院。
徐々に進行していた症状を「10」すると10日程で「6」くらいまで軽減。
ご本人も激痛と痺れがひどく気になっていた症状が、だいぶやわらいで楽になったと仰っていました。
現在も継続中。
セルフケアとして
手根管症候群で気を付けなければいけない姿勢や手の使い方等を細かくお伝えしました。
今まで「首」が原因と言われていたこの患者様にとっては、症状がある手はむしろ血流をよくする為にストレッチや動かしたり、あえて使っていたようでした。
これも悪化の原因ですね。
まとめ
当院では、
「他院で〇〇と言われた」
「整形外科で〇〇と診断された」
「ネットに出てる症状と同じなので〇〇だと思う」
などのお話。
もちろん耳を傾けております!
しかし、それらの症状や疾患を鵜吞みには決してせず、自分たちの知識や経験を元に検査結果にしっかりと落とし込んで確認してから施術を行います。
上記のように、診断された症状/疾患とは違う原因、または複数の原因などが関与する事はわりとよくあります。
原因をしっかりと分析し突き止める事。
やはり、治療においてこれが一番大切な事だと改めて感じました。
なかなか良くならない症状や徐々に悪化している症状など、お悩みの症状がございましたらお気軽に当院までご相談下さい。
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